生きざま

オタクの生きざまなど

ネタバレをせずに感想で推しドラマを盛り上げてほしいという公式からの難題に直面しています

A.B.C-Zというグループをご存じでしょうか。ご存じでない人がこの記事を見るのか?ジャニーズの中堅どころのアイドルグループです。あとはググってください。

今回、名古屋のローカルテレビ局である『メ~テレ』企画で彼らが主演のドラマが制作されました。

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以下しばらく本ブログ開設の経緯です。そういうのどうでもいい場合は『本編』まで飛ばしてOKです。

経緯

元はといえば2年前に同局で制作された単発ドラマ『ぼくらのショウタイム』の次作として立ち上げられた企画のようですが、本当に実現するとは思っていませんでした。アイドルグループだと、デビュー間もない若手の顔見せのための作品みたいなものはなんかありそうですが、そこそこキャリアを重ねたグループが、全員出演し、個人に深掘りした骨太の連続ドラマ、というのも中々珍しいんじゃないでしょうか。

2回通しで見た限りですが、非常に良作です。熱心なファンの間だけのお楽しみで終わるには、もったいないと思います。確かにこれは広まって欲しい。

今のところ制作局であるメ~テレとtvkで4月期に放送されることが決定しています。これに先駆けて、3月8日からAmazon Prime Videoでの有料レンタル配信がスタートしました。ファンの温度感としては、自分のようにすぐ全話視聴した人と、1話ずつ時間をかけて見る人、4月のテレビ放送を待つ人と色々いるようです。

各自のポリシーに則ってやってることなんで、それは別にいいんですが、制作サイドとしては4月のテレビ公開を本放送と考えているのか、ファン同士の無用のトラブルを避けたいのか、ありていに言うと公式自ら「ネタバレ禁止」を打ち出してきました。

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— 【公式】ドラマ「ワンモア」🏫先行配信中!4/5(月)地上波放送スタート🌟 (@1more_official) 2021年3月8日

 この言い方からして「結末部分のトリックを明かさないでね」ということだとは思いますが、公式にそう言われちゃうと自粛ラインを大幅UPさせちゃうのがオタクじゃん?てな訳でどこまで言っていいのかわからなくなり表立って内容に言及する人が少なく、これでは盛り下がってしまって本末転倒やないか…!と危惧していたところ、次のようなキャンペーンが打たれました。

 

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— 【公式】ドラマ「ワンモア」🏫先行配信中!4/5(月)地上波放送スタート🌟 (@1more_official) 2021年3月9日

当然ながら混乱するオタク。公式アカウント自ら続くツイートでフォロー。

オリジナルB5ノートは、台本と同じデザインです✨✨

ネタバレしないで感想…という「どう書こう!?」と迷っちゃうような企画ではありますが…🙏#ワンモア をたくさんの人に届けるためにもぜひ!ドラマを見てのご感想や思いの丈をこのタグにお寄せください✏#Amazonプライムビデオ#先行有料配信中

— 【公式】ドラマ「ワンモア」🏫先行配信中!4/5(月)地上波放送スタート🌟 (@1more_official) 2021年3月9日

 ですよね~。昨日された指示と相性の悪すぎる企画を提示される我々。どんな無理難題にも応えることを期待されるオタク。そんなところまで担タレじゃなくていい。

ともかく我々はやらねばならない。このムーブメントが少しでも大きくなることで、ワンチャン、放送局が増えるかもしれないし、ツーチャン、有料レンタルではなくサブスク配信などもあるかもしれず、スリーチャンとして円盤リリースにつながらないとも限らない。

なのでわざわざ8億年ぶりにはてなブログを開設しました。なんとここまでが前置きです。売られた喧嘩は全力で買う主義のオタクなので(喧嘩は売られていない)、「いかに一定の制約下で推し作品への期待感を描写できるか」にチャレンジしてみたいと思います。

 

本編

本記事(ネタバレなし版)では努力目標として以下のルールを意識しています。

  • 結末部分の核心には言及しない
  • 判断材料にする設定は公式サイト、予告動画、事前インタビュー記事から読み取れるもののみ
  • Amazon Prime Videoのコンテンツ説明として書かれたあらすじは引用してよい
舞台について

『ワンモア』のストーリーの中心となるのは、定時制高校です。私自身は全日制の出身であり、身近にも定時制の経験者があまりいなかったため今回調べて初めてわかりましたが、定時制といっても夜だけとは限らず「午前の部」「昼間の部」といった形での定時制もあり、統計上ではなんと在校生の8割が十代の若者ということで、現代の実際の定時制高校は「社会人や高齢者がリカレント的に夜通う場所」でもないようです。

今回の舞台である「江尾市立轟高等学校」の定時制のクラスですが、働きながら通っている生徒が4人、高校を中退し引きこもりの若者が1人、高齢者が1人という構成で、『大人が勉強して何が悪い』というドラマのテーマに沿うとするといずれも成人であると考えた方がよさそうです。

そもそもひとクラス6人というのが少なすぎる気もしますが、山とかデカい戸建てに囲まれた轟高校周辺の風景からして都市部ではなさそうなので、定時制で高校に通うという若者自体が少ないのかもしれません。(もしくは、ここで描かれていない他のクラスに若者をまとめて配置しているとか?)

登場人物

A.B.C-Zのメンバーのうち、二人が教師役、残り三人は生徒役です。私はA.B.C-Zのファンなので、主要5人のことを書きます。

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すでに複数の方が指摘している通り、メンバーが担っている役名の頭文字が地・水・火・風・空の五大要素と一致します。インドの思想らしいのですがこの分野はまったく詳しくないのでとりあえずインターネットの知識を参考にしておきます。グーグルだけが頼りだ。がいかなるジャンルにおいても専門家がいるでおなじみのえび担なのでだれかインド哲学を専攻していた方などがいらっしゃったらもっと正しい内容が周知されるのではないでしょうか(他力本願)。

そう思って見ると各人の性格や立ち位置と対応する要素の担う性質は相通ずるものがあるように感じます。ちなみに本作は演者本人のイメージにない部分を描く「逆当て書き」であるとされているようですが、自分が視聴した印象とまわりのファンの反応をみるに、「むしろ本質に近いところを描写しているのではないか」という感じもします。(まあ、オタクが推しに自分の見たいものを投影しているだけかもしれませんが…)

【地井誠】

クラス担任である地井誠先生は、過去に訳ありで非常にドライな人物とされています。五大要素としての「地」は地球や大地を意味し、すべての生物に影響力を持ち、硬いもの・安定していること・変化への抵抗などを表すとのこと。

過去に起きた事件(劇中で詳細が明かされます)がもとでかたくなになった生き方と、それがどのようにほぐされて周囲を変えていくきっかけになるかというのが、本作品のキーでもあります。実際のところ、物語が大きく動くきっかけになる行動であったり、重要なメッセージを伝える役割を彼が担っている場面がたくさんあります。

演じている河合郁人さんは公式にはそうと決まっていないものの実質的にグループのリーダー的なポジションにいますし、バラエティ番組などでMCの意図をくんで会話を進める「裏回し」を期待されるなど、縁の下の力持ちとしての能力も高い人物であり、この役柄もなるほどという感じです。

【水野真二郎】

教師としてのキャリアが長そうな地井先生と対照的に、副担任の水野先生は転職したばかりの新米です。教員採用されるまではアルバイトを転々としていて、直前の仕事はテレビ局の警備員をしていました。(ところで、前作である『ぼくらのショウタイム』でも世界観などは全く異なりますが、同じ五関さんが警備員の役を演じていて、もしかしたら榊英雄監督には警備員という存在に何か特別な思い入れがあるのかもしれません。)

轟高校は江尾市立なので、公立高校の採用試験を受けたのだと思われます。自治体にもよりますが、教員採用試験の一般枠は40歳位を上限としているところが多く、倍率は低いところで5倍から20倍近くにもなる自治体もあるようです。役柄上の年齢は明言されていませんが、制作の背景からして演じるメンバーの実年齢とほぼ同じと考えて良さそうなので35歳ぐらいだとすると本人的には限りなくラストチャンスだったでしょう。

五関さんといえばなんでもそつなくこなし、いつもマイペースで、彼と同世代のジャニーズタレントの口からはジュニア時代の伝説をたくさん聞くような人ではありますが、水野は何事もどこか不器用でイノセントです。学校ドラマオタクで、様々な教師役のモノマネをしているようですが、一方でそれは「本当の自分」への自信のなさの表れともいえます。

五大としての「水」は、流動的であり変化に対する適応力、すべての生命の源などを意味するようです。遅咲きで教職デビューをし、職を転々としていたような流されがちな人物とされているともいえるし、環境の変化に強く他人を生かす力のある存在であるともいえるかもしれません。

事実、彼の生きざまが他の登場人物のおそらく人生観を大幅に書き換えるであろう場面が出てきます。

【火村直哉】

元素としての五大に優劣はありませんが、実質的な主人公は彼ではないかと思います。「火」が象徴するところである力強さや活力、情熱、物事を成し遂げる欲求であったり、イメージされる赤色は一般的に戦隊ものなどでは主人公のポジションに与えられる要素です。

『ワンモア』のストーリーは、火村が定時制高校に入学(おそらくは中途入学)をする場面からスタートします。ドラマの構成そのものは各キャラクターにスポットをあてたオムニバスのように進行していきますが、根幹のテーマをもっとも体現する人物として、前科があり保護観察中の若者が学校での勉強や仲間との交流を通して変わっていく、という設定はとてもしっくりきます。

演じる戸塚祥太さんは普段はいつも笑顔の優しい人物で、喧嘩に明け暮れたヤンチャな若者といった役柄と遠いようにも見えますが、同僚や刑事に挑発を受けて「手は出さないしあからさまに怒った表情じゃないけどめちゃくちゃ怒ってる」という凄味のある表情、筋の通らないことにはキッチリ怒る片鱗を感じているオタクには割と説得力のあるものでした。

【空田公平】

「空」はspaceなので、空間であり、宇宙であり、場そのものといった意味になるのだろうと思われます。私は塚田さんのファンなのですが、空田の「大病をして学校に行けず、退院後にシングルマザーと結婚したが奥さんは若くして急死。シングルファザーとして血のつながらない元妻の連れ子を育てる」という設定を最初に聞いて、全部盛りすぎんか???と思ってしまったものの、この漫画編集マンでも「ちょっと引き算しよっか」と言われそうな設定をありにしてしまうところが塚田僚一への信頼感なのだなと考えなおしました。

これは個人的な印象なのですが、若くして大病をしたり身近な人を亡くした人物はそうでない人と精神的な年の取り方が大幅に異なると思っていて、その両方を経験した空田の死生観は限りなく真に迫った冷徹なものであると考えられます。

周りを気にせず学ランを着て登校し、元気にふるまい時としてそれが無遠慮にもうつりがちな空田ですがクラスメイトにかける言葉でも彼にしか説得力を持って言えない内容は多く、定時制高校で変わっていく人物の象徴が火村だとすると、その火村を受け入れる場を作り出す中心人物が空田だといえるかもしれません。

【風間翔】

 演劇制作の人は、橋本良亮に精神的に繊細な役どころをやらせたくなるものなんでしょうか。気持ちは多少わかります。彼の止め絵での表現力が抜群に過ぎるのと、かっこよく・明るくキメているアイドルショットにおいてすら、どこか憂いを感じるのが橋本良亮さんの不思議な魅力だと思っています。

なので(なので?)、今回も引きこもって高校を中退し、他人とコミュニケーションをとることが難しい若者として描かれています。父と兄が医者のエリート一家に生まれて比較されることにより持ち崩したというような書き方ですが、家庭に居場所がなければ学校や友達といる方が良いとなりそうなので、もともと通っていた高校でもいじめなどがあったのかもしれません。また、学力は人並み以上とのことですが、何らかの発達障害学習障害があり、かつ両親にその認識がなく適切な対応を受けられなかった可能性もありそうです。

「風」は成長すること、自由であること、それから万物に変化や活力をもたらす存在であるようです。火村が実質主人公で変化の象徴と書きましたが、状況や年齢からみた「のびしろ」という点においては、風間の方が振れ幅が大きそうではあります。彼の変化の度合いと、ストーリーの進行度がある程度連動しているとみて良いと思います。

物語の行く末

前述の通り、結末部分を明かすことはご遠慮をお願いされている状況で、喧嘩上等オタクの人格としてはばらされたくないなら先行公開すんなや!!!!!と言いたいところですが、確かに最後まで見てみると知らずに見た方が絶対楽しめるもんな~というご理解もあり、いやでもこれで伝えられる良さって言ったら「顔が良い」とかにしかならんのだが???というお気持ちもあり、ちゃんとワンクッションおけばええんやろ?!?!パスワード付き記事120ポイントの赤字で注意!!!!って書いとけばええんやろ?!?!?!?!とも思いますのでネタバレ版の感想はもっとみんなバンバン出していいんじゃないでしょうか。私が見たいですし。

いま言える範囲で述べておくと、逆当て書きでも純粋な当て書きでもいいんですが、特定グループのメンバー全員が主演、本人を意識して描かれたキャラクター設定と物語という時点でオタクとしてはある程度このドラマを実際の状況に重ねてみてしまうところがあるのは否めません。

というところを見越したうえで、あの結末になるのだとしたら、いやほんと、それはすっごいっていうかさ…。

ある意味で、フィクションのトリックとしてはさほど奇抜な展開ではないかもしれません。登場人物たちが出会う困難や、その解決方法も単純化した「泣かせ」の仕掛けだと受け取る人もいると思います。私も「悪役」や「いやがらせ」の描き方はだいぶデフォルメしているし現実にはあんなに「わかりやすく失礼で悪い」人はいないだろうとは感じました。ただそれほど(鑑賞の妨げになるほど)気にならなかったのは、「悪い人に悪いことされたので成敗する」のがこの作品の主題ではなく、「三十代の大人がどうやって人生を生きていくか、生きているとどういうことがあるか」(橋本くんはまだ27歳だけど)みたいなところで身につまされる部分があったからだと思っています。私も三十代ですし、仕事もしているし、家庭があるので。学校に行く予定は今のところないけれど、これから人生で起きることに対して、どうやって向き合うか、それでも生きていかなくちゃいけないもんね、みたいなこととかを考えました。

願わくば、轟高校のみなさんの人生も、幸せであれかし、と思います。