生きざま

オタクの生きざまなど

【ガチネタバレ版】ワンモア第七話感想

7話の感想です。まずはこの内容をネタバレせずに本放送まで巨大な感情を抱えて生きていた先行配信組のオタクをほめてほしい。

 初めて6話のラストまで見たとき、言うて松葉杖ぐらいで再登場でしょ~アイドルですし…とちょっとナメていた自分がいました。この演出については賛否色々だよな…とは思っていますが、一方で本当に人って突然いなくなりますもんね、とも感じました。泣かせるために主要なキャラクターを退場させたかというとたぶんそうではなくて、もしそれならもっと方法はありますからね。不治の病で余命いくばくもなくてそれを本人だけが知っている、逆に本人だけが知らないとか。日常生活を送っていて突然親しい人が亡くなり、それでも生き残った我々は生きていかなければならない、時間はたんたんと流れていく、そういうところを見せたいのかなと感じました。

水野の死を地井が知らせにくるときもそうです。別に靴紐が切れる必要はありませんが、やろうと思えば不穏なBGMを流して何かあると思わせるつくりにはできたと思います。しかし教室で待つ火村、風間、空田はあくまでも水野のちょっとしたポカだろうということを疑わず、穏やかに雑談をしています。風間が「こうやって友達とどうでもいい話をすることがやりたかった」と述べる、その平和さが裏で起きている現実と対照的にうつります。

平凡な自分にコンプレックスがあり、何者かになりたくて、どこか浮ついたあこがれだけで教員になった、いつまでも子供のような水野が今後どうなるかというのは気になっていたことでしたが、その彼は志半ばで亡くなってしまいました。このまま教師の仕事を続けていたらきっと出会ったであろう理不尽や挫折を一切味わうことなく、ある意味で彼にとって人生は願えばかなうキラキラしたもののまま終わりました。それでよかったのかどうかは正直わかりません。し、もし生き残っていたとして水野のピュアネスを守ってくれる仲間に恵まれてあくまで彼は楽しく浮ついたままおじいちゃんになっていた可能性もあります。それならそれで見てみたかったですが。

水野の希望をかなえるために場違いな金八先生コスプレで現れた地井も、そんなことはやめろと迫った生徒達も、方向性は違えどそれぞれのやり方で水野のピュアネスを守ろうとしたのだと思います。水野の言葉を地井が代理で語り掛けるシーンが、水野の姿に切り替わります。事前のインタビューによると、この場面の水野のセリフはほぼアドリブで共演者は変更を知らされていなかったとのこと。なので、ここで贈る言葉を聞いている生徒達の反応は、水野が生きていたifの世界という印象が強くなりました。実際に地井の代読を聞いている彼らはもっと違った顔なのだろうと。

4年後のテロップが入り、卒業式を終えたと思われる地井と生徒達が現れます。そこに挿入される教室の黒板には、生徒たちの手によるものと思われるメッセージがいっぱいに描かれていますが、日付は3月5日金曜日です。ワンモアの世界線は2020年4月からのスタートなので、4年後の卒業式は2024年になりますが、3月5日は火曜日です。では金曜日なのはいつなのかというと、直近だと2021年です。つまり、このメッセージは水野が亡くなった年度のおわりに生徒達が描き、それが2024年の時空に挿入された、もしくは2024年に曜日をあえて変更して描いた可能性があります。事前のティーザーや予告編でもこの黒板が写っていたので、日付から2021年の間に何かがあったことを推理する余地を与えられていたのかもしれません。と言ってこの結末を予想できるのは無理ですが…。

全篇を通して視聴し、とにかく余白が多い作品だなと感じました。スカスカってことじゃなく、画面上に起きていないことを考える余地があり、最低限の情報量に抑えられていたなと。普段一切見ないのでドラマ筋がきたわってないのもありますが、非常に体力を使うけど心地よい疲れが残る作品でした。少し時間をおいてから見たら、また違った感想や気づきがあるかもしれません。

『ワンモア』はDVD/Blu-ray化が決まりましたが、それに伴ってか、残念ながらAmazonPrimeでの公開は終了してしまうようです。おそらくDVDを買うようなオタクはそのコンテンツが公式に無料公開されているからと言ってズルいといった感情は一切抱かないので、また時々サブスクリプション公開や再放送などをしてほしいと思います。