生きざま

オタクの生きざまなど

【ガチネタバレ版】ワンモア第一話感想

[ 前回までのあらすじ]

推しグループ全員主演の連続ドラマに浮足立つも、配信先行公開時はネタバレしないでほしい、しかし感想を言ってほしいという要求を突き付けられたオタク、怒りのバレ無し感想を更新。無事制作局での放送が始まったが、逆にネタバレがいつ解禁なのか我々は何も聞かされていないのだった…。

 

 

いや、いいんですよね???

 

www.nagoyatv.com

 こちらの話です。

Amazon Prime Videoでの先行公開から約一か月、ようやくメ~テレでの初回放送が終わりました。これに伴い、TVerGYAO! での無料配信が始まり、Amazon Prime Videoでの公開は終了しています。

…と思ったら、いつの間にか見逃し配信ラインナップにAmazon Prime Videoも追加されていました。有料で先行配信していたリンクが放送週に合わせて無料公開される形なのでしょうか?

tver.jp

ということで、無料配信分はネタバレしていいんじゃないかという判断のもとに改めて感想を書きたいと思います。二話以降の内容についてはなるべく含まないようにします。しかし一話についてはガチでバレていきます。いいか、いいな、宣言したぞ、それでもいいやつだけがこの先を読んでくれ。

 

 

上空から鳥瞰するような映像からドラマがスタートします。画面が移動していくと、駐車場の奥に大きな建物が現れ、どうやらテレビ局であろうことが推測できます。教員採用が決まったため、警備員のアルバイトが今日で終了するという水野の登場から物語が始まります。

前回の記事で、本作の実質的な主人公は火村だと書きましたが、裏主人公は水野ではないかと思います。ストーリー展開や設定が骨太なだけに重たくなりがちな雰囲気の中、明るく熱血でイノセントな水野の存在は一種の清涼剤でもあり、コミックリリーフ的な役割を担っています。(このことが、後からほんとうに活きてきます)

 ここからOPタイトルを挟みながら一人ずつ順番に名前と状況が紹介されていくのですが、モノローグやナレーションといった手法は用いられていません。そのため、基本的にはキャラクター同士の会話と画面に登場するものが事実のすべてになります。倍速で流し見しながら気軽に楽しむには正直向いていないコンテンツではあります。(まあ一話23分なのであえて倍速で見る必要があるほど時間も食いませんが…)一方であれこれ邪推したり妄想して楽しむにはコスパがいいスルメ系統ではないでしょうか。

シーンが切り替わって、火村の登場です。株式会社谷部木材という建築資材会社で働いている姿が見えます。

気軽にググって死ぬほどビックリしたのですが、株式会社谷部木材は実在の会社で、外観からしてこれはそのまま撮影場所に使われて…いるのでは…えっ、みんな知ってたん???わたし今初めて知ってめちゃくちゃ驚いたんだが…。

www.etree.jp

実際の谷部木材さんがどのような採用方針かはわかりませんが、ワンモアでの谷部木材は火村をはじめとして、同僚(正確には先輩かな)の谷川など、少々ヤンチャそうな経歴の若者が集まっているようで、谷部社長役も宇梶剛士さんというほんもののその筋の方(その筋の方って言うな)が演じておられます。

火村が事務のおばちゃんに二級建築士を取得しないかと持ち掛けられるも、テキストや問題文を理解するための基礎学力が足りていないことから高校に通いなおすというのが導入部分の主なストーリーです。

二級建築士は戸建など小規模な建築物の設計をすることができる国家資格で、試験要領を見ると4月に受験申し込みが行われているようです。谷部木材では毎年この時期に見込みのありそうな従業員への声掛けをしているのかもしれません。

火村は幾度となく谷川から喧嘩を煽るような態度をとられていることが見て取れますが、怒りを示しながらも手は出しません。一話の後半で明かされますが、彼は執行猶予中の身であり谷部社長が身元引受人となっています。そのため暴力沙汰は避けなければならず、谷川も事情をよくわかっていていじめのターゲットにしているのでしょう。

喧嘩を買うまねこそしないものの、このときの火村は人とのコミュニケーションを拒否しているように見えます。谷部社長としても、その部分でもう少しどうにかなって欲しいという思いが見て取れます。ところでこれは個人的意見ですが、火村を演じる戸塚祥太さんは右目というか顔の右半分に明るさ・熱意・希望があり、左半分が絶望や虚無といった顔つきをしていると思います。このアンビバレントな感じが火村という人物の不安定さによくマッチしている気がします。

また場面は変わり、今度はいかにもな豪邸です。たぶん出入りの庭師いるなみたいな外観とは裏腹に、それなりに荒れ果て散らかった薄暗い室内でゲームをしているのが風間です。画面デザインからの推測ですが、プレイしているのは『CARAVAN STORIES』というMMORPGのようです。AKRacingの高級ゲーミングチェアにドデカモニター2台もあったので、ほかにもいろいろゲームはやっているかもしれません。

風間家は、どでかいリビング、なんか高そうなソファ、エリエール贅沢保湿を普段使い、近所に買い物に行くにもバッチリおしゃれするママと病院を経営している父、そして同じく医者の兄というちょっと描写としては類型的すぎる気もしますが、ともかくザ・お金持ちエリート家です。

高校を中退して以降引きこもっている風間の、おそらく唯一の外出先が定時制高校です。話しぶりからして父親は定時制高校への通学をよくは思っていないようです。Amazon Prime Videoのあらすじによると風間はIQ164らしいのでさっさと高卒認定試験だけをパスして医学部とかに進学してほしいんじゃないでしょうか。

この父親、部屋のドアを開けようとしたり声を荒げる様子はありますが、1人部屋を無理やり取り上げたり更生施設に送ったりということまではしていないみたいですね。まあそういうとこに息子がいるとわかると世間体が悪いから家の中でどうにかしようとしてこじれているのかもしれませんが…。風間がなんとかスクールとかなんとか式に放り込まれる未来じゃなくて、良かったと思います。

この後、『シロイヌヤマダ宅配便』の配達員をしていて、小さなアパートに小学4年生の娘と二人暮らしの空田が登場します。娘との会話の中で、空田の妻はすでに亡き人であることがわかります。また、担任教師である地井ですが、飲んだ勢いで出会った行き摺りの女性を自宅に連れ込み、一夜を共にした後という(アイドルのドラマ登場としては)割と衝撃的なショットで現れます。

空田の住むアパートは、つましいながらもそれなりに充実して生活している感じがある、明るくて整頓された家です。一方で地井の自宅の様子は、全体に殺風景で生活感のない場所という印象です。不思議なことに、地井の自宅にある炊飯器や冷蔵庫といった家電は、男性の一人暮らしには大きすぎるファミリーサイズのもので、キッチンもそれなりの大きさがあり、どこかビジネスホテルのような寝室とチグハグさがあります。彼のスマートホンの画面を見るとWifiも引かれていないので、誰かが住んでいた家をそのまま借りていて、いつでも出ていけるように必要最低限のもの以外私物を追加していないのでは?という気もしてきます。または、設定として明言されていないものの、以前は一緒に住むパートナーなどがいたのかもしれません。

ドラマの後半は、主に火村が高校へ中途入学するまでの経緯が描かれます。カフェで勉強をしていたところ、高校の全日制に通う生徒のグループが高齢男性(のちに同じクラスとなる昭三さんです)をバカにした態度をとり、腹を立てた火村と喧嘩沙汰になってしまいます。

ところでこの悪ガキ高校生たちも一昔前のステレオタイプという気がしなくもないですが(今時の中流以上の若者はもっとスマートで悪気のないピュアな差別心を持っていると思うので)、ああいう暴言や挑発を日常的に繰り返しているとすると、間違いなく学校にクレームがいきまくっているはずで、それでも問題なく学校生活が送れているとするとあの中の誰かの親が地元の名士とか、政治家とか、組合長とか、そういう事情があるのでしょうか。

高校生ともめ事を起こして警察署に呼ばれた火村を谷部社長が迎えに行きます。帰る道すがら、火村はいつかもっと大きなヘマをやって谷部社長に迷惑をかけるのではという不安を口にし、そして悔しそうに「でも俺、馬鹿だから」とうつむきます。彼が一歩踏み出すことをためらっているのは、自信のなさによるものだとここでわかります。谷部社長はそのことをよくわかっているようで、このタイミングで「俺と賭けをしねえか」という言葉で火村を定時制高校へ誘います。

これで役者と前提説明がそろったので、全員が江尾市立轟高校の門をくぐる後ろに主題歌が流れ、火村と水野が教室に登場して第一話は終了です。

あまり関係ありませんが、この日(火村と水野が轟高校へ初めて来た日)の日付は4月27日月曜日となっていました。中盤、風間が玄関で父親に諭されて大声を上げるシーンの直前では、4月15日水曜日でした。火村がカフェで高校生と揉めたのはこの二週間の間ということになりそうです。また、年号はこの時点で確定していませんが、曜日からみて2020年のコロナ禍ではない世界の出来事だと考えられます。より現実に即した内容にするには新型コロナウイルスの流行を描くべきなんでしょうが、それをしてしまうと少なくとも一学期はほとんど誰も学校に通えなくなってしまい、ドラマとして目指すところとは異なってしまうのでこれでいいと思います。まあもしコロナ禍の世界であったら、現実の多くの子供たちがそうであったように、引きこもりの風間などはかえってリモート主体で楽しく学校になじめていたかもしれませんし、空田の病気がどういうものか不明なものの、ハイリスク群であれば通学どころか買い物や仕事などもままならない生活でまた別のドラマが生まれていたことでしょう。それはそれで見てみたい気もします。あとはワンチャンで西暦2201年の人工コロニーでかつての地球の暮らしを再現している物語の可能性はあってもいいと思います(なくていい)。